「せっかく育てた社員が辞めてしまう」「次世代を担う人材が育たない」――
これは、多くの中小企業が抱える共通の悩みです。採用が難しい時代において、一人ひとりの社員をどう育て、いかに長く活躍してもらうかは、企業の将来を左右する重要なテーマです。
この記事では、「人材育成」と「定着支援」を切り離さず、両立する新しい視点と実践策を、外部キャリアコンサルタントの立場からご紹介します。

人材育成と定着支援、なぜ“別物”として扱われてきたのか
多くの企業では、人材育成=スキルや知識を教えること、定着支援=福利厚生や待遇改善といった具合に、
別の部署や施策で行われてきました。
しかし、現場ではこのような声も聞こえます。
・「研修はあったけど、実際の仕事にどう活かせばいいかわからなかった」
・「キャリアの相談ができる人が社内にいなかった」
・「成長したい気持ちはあるけど、会社が応えてくれる雰囲気じゃなかった」
このような状況では、せっかく育成してもモチベーションが上がらず、離職につながるケースが多くあります。
人材育成と定着支援は“つながってこそ”効果を発揮する
育成した人材が定着しなければ、投資は無駄になり、企業のノウハウも外に流出してしまいます。
一方で、社員が「ここで成長できる」「自分の未来が描ける」と感じられれば、モチベーションが高まり、
離職率も大幅に下がります。
ポイントは、“会社と社員が未来を共有できる関係性”をつくること。
そのためには、育成と定着を切り離さず、社員の「キャリア」に寄り添った仕組みづくりが不可欠です。

両立のカギは「キャリア支援」という視点
育成と定着をつなぐ軸として、注目されているのが「キャリア支援」です。
キャリア支援とは、社員が自分の価値観・強み・将来像を見つけ、自律的に働くことを後押しする取り組み。
社内だけで完結できない場合は、外部キャリアコンサルタントの活用も効果的です。
▼具体的な効果:
- 社員のモチベーション向上
- 離職率の低下
- 部下育成の質向上(管理職のコミュニケーション力アップ)
- 経営層が現場の声を把握しやすくなる
キャリア支援は、研修でもなくカウンセリングでもない「未来への伴走」です。
実践例:中小企業が取り入れやすい3つのステップ
ステップ1:キャリア面談の導入
定期的に社員と1対1で「これからどう働きたいか」「どんな強みを活かしたいか」を話す場をつくります。 社外のキャリアコンサルタントが入ることで、社員の本音が引き出しやすくなり、上司へのフィードバックも行いやすくなります。
ステップ2:キャリア視点を取り入れた研修の実施
従来のスキル研修に加え、キャリアデザイン・自己理解・リスキリングなど、社員自身が「自分の方向性」を考える時間を提供することが重要です。
おすすめのテーマ:
- 強みを活かす働き方とは?
- 10年後の自分を考えるワーク
- 人生100年時代のキャリア設計
ステップ3:経営層・管理職へのキャリア支援理解の促進
社員の定着は、上司や経営層の理解なくしては実現しません。 管理職向けに「キャリア支援の必要性」や「若手世代との価値観の違い」を共有する場を設けると、支援の質が格段に向上します。

人材を活かす企業は「キャリア支援」が当たり前になる
すでに一部の企業では、キャリア支援を“戦略的に”取り入れ始めています。
- 若手の離職が減った
- ミドル世代のモチベーションが上がった
- 採用面でも「ここで働きたい」と感じてもらえるようになった
このような成果は、「会社が社員の未来を大切にしている」というメッセージが伝わった結果です。
社員の成長と定着は、会社の成長そのものです。
【まとめ】
人材育成と定着支援を両立するためには、「キャリア支援」という視点を導入することが、
これからの時代の新しい選択肢です。
単にスキルを教えるのではなく、社員一人ひとりの未来に寄り添うこと。
その積み重ねが、組織力の強化・業績向上・採用力アップにつながります。
中小企業だからこそできる“社員に近い距離感”を活かし、今こそ、キャリア支援を育成と定着の真ん中に
据えましょう。